Mar 2019 | Articles |

 

Juvoの創設者兼CEOのスティーブ・ポルスキー(Steve Polsky)氏、First Dataのアジア太平洋地域グローバル財務ソリューション統括責任者のスレッシュ・チャンドラセカラン(Suresh Chandrasekaran)氏らの共同パネリスト、Egon Zehnderのパートナーでモデレーターを務めるアクセル・シュナイダー(Axelle Sznajer)氏と、2019年における金融包摂の意味について討議

 

先日、私はシンガポールで開かれたMoney 20/20 Asiaのパネルディスカッションに参加するすばらしい機会に恵まれました。金融包摂が今日意味するところ、また金融サービスにアクセスできないアジアの人々のニーズに対する組織の対応策について話し合いました。最も重要なのは、社会経済的に恵まれない人々が金融サービスを活用できるようにする取り組みについて域内進捗状況のアセスメントを行ったことです。デジタル金融へのアクセス性という点ではある程度の改善が見られたものの、金融サービスをさらに幅広く行き渡らせるにはまだやるべきことがあるいう点で意見が一致しました。

 

アジアの多くの企業が社会経済的に恵まれない人々向けにソリューションを開発していますが、こうしたツールだけでは問題を解決できません。金融リテラシーと知識の大きなギャップに対処する必要があるのです。当社チームが先日、アジア太平洋地域の特定の社会経済的グループ(移民家事労働者)の金融包摂レベルを検討したところ、これらの労働者のアジア太平洋地域経済への貢献度と金融包摂のレベルにギャップがあることがわかりました。エクスペリアンが委託したFrost & Sullivanレポートによると、アジア太平洋地域の移民家事労働者の50%近くが銀行口座を持っていないことが明らかになりました。主な理由として挙げられたのは、金融知識と意識の不足でした。

 

金融包摂達成への第一歩は、金融リテラシーレベルの向上です。コミュニティが金融スキルを身につけられるよう、様々な業界のステークホルダーが連携する必要があります。この取り組みの一環としてエクスペリアンでは、AidhaEnrich等の女性慈善団体と協力し、金融リテラシーやメンターシッププログラムを通じて域内の数千人の女性移民家事労働者をサポートしています。

 

消費者や金融機関が直面するもう一つの課題は、オンラインの信頼度の問題です。テクノロジーの進化に伴い、企業が従来型ではなくデジタルの消費者IDに依存する度合いが高まるものと見込まれます。直接の対人取引や電話での取引とは異なり、デジタルのやり取りでは見た目や音声から信頼できるかどうかを判断することができません。デジタル変革サービスや製品シリーズ、またそれに伴う重要インフラにより、新たなタイプの脆弱性が生じる可能性があります。

 

そのため、本物の顧客と不正者を区別し、新規顧客が排除されないよう徹底できるソリューションを導入して実装することが、組織にとって不可欠となります。たとえば、エクスペリアンのProve-IDではオンラインIDを安全に作成できるので、インド国民を国内の巨大オンラインバイオメトリックデータベースに取り込むことができます。このソリューションにより、社会的に取り残された700万人超のインド国民が、安全で信頼性の高い環境で政府や金融サービスにアクセスできるようになりました。

 

金融包摂を進めるために、金融機関、フィンテック企業、規制当局、政府は、引き続き連携し、知識共有と業界全体の規格のさらなる策定に取り組む必要があるでしょう。銀行が順守できないのであれば、規制当局が新しい指令を発行しても意味がありません。同様に、適切なツールとデータを備えていなければ、金融サービスにアクセスできない人々に対して銀行が手を差し伸べることはできません。私は非常に楽観的にとらえています。業界の垣根を超えた協力こそが、アジア太平洋地域のみならず世界全体の金融包摂の課題克服の鍵となるものと確信しています。

 

アジア太平洋地域担当 CEO

ベン・エリオット(Ben Elliott)